こんばんは、あいてぃ~です。
本日は小学館文庫より2007年11月11日に初版の発行がされました、中村 航さんが書いた「100回泣くこと」について感想を述べていこうと思います。
2013年には映画化もされたこちらの作品、命を題材にしつつどこか妙にリアルでドキッとさせられる本書の魅力をまとめましたので、最後までお付き合いください。
それでは、やっていきましょう。
所感
読了した感想ですが、激しい変化の描写は少なく、現実の日常のように淡々と進む中で発生するイベントの演出が判りやすい表現であり、ページ数が比較的少ないことも相まって非常に読みやすかったです。
主人公目線で描かれる中で登場人物の人物像がしっかりと描かれており、前半はその主人公と彼女がお互いに寄り添って新しい日常を創り上げていくその姿にこちらまで嬉しい気分になるようでした。
一方後半では、彼女が病床に伏し幸せな日常が崩れていく様子と仕事という一向に変化しない妙にリアリティのある日常に板挟みにされるシーンで心を打ち砕かれるような気分でした。
最終的に主人公は100日以上そこから立ち直れず、毎晩酒に溺れながら涙を流します。しかし徐々にその事実と向き合い、前を向く描写に私は感動しました。
また、この本で起きた物語は誰にでも起こるかもしれない、普通の日常を描いた物語なのだろうと感じました。作品の流れはベタな恋愛小説であり、展開も特に度肝を抜かれることはないのですがどこかじわじわと考えさせられてしまうような、シンプル故不思議な作品と言えるでしょう。
私の好きなポイント
ここでは、私の好きなポイントを2つ紹介します。
主人公と彼女の寄り添い合う生き方
好きなポイント1つ目は、主人公と彼女の寄り添い合う生き方です。
著者である中村さんは、男女の関係について「男が女性を求めて旅をすることより、男女のカップルで旅をしていくことが好き」と話しています。
本書前半はまさにそういったシーンが描かれます。印象的なのは、1年間結婚生活を練習するというシーンでしょうか。
前者的な展開ならば、男が女性に対しプロポーズをし結婚生活を―――的展開でしょうが、恋愛関係であった2人が同じ方向を向いて人生を進めていこうとする様子が結婚の練習として表現されています。
お互いの人生が、時間と空間が徐々に溶け合わさっていくような、2人で1つの人生を創り上げる喜びを感じられました。
絶対に明かない箱
好きなポイント2つ目は、絶対に明かない箱の存在です。
物語後半で主人公の藤井君に対し彼女が、「絶対に明かない箱」が欲しいと話すシーンがあります。
私が思うにこの箱は、彼女にとって婚約指輪の入った箱という意味が込められているのかなと考えています。
そのシーンの時点でおそらく彼女は自身の先が長くないことを察知していたでしょう。主人公の今後の人生において私を引きずって欲しくない。けれども結婚生活の練習期間は終わり、彼は本気で私を愛してくれている。
そのため主人公に対し絶対に明かない箱を要求し、自身の中で結婚生活の練習に区切りをつけると同時に結婚という意味をその箱に持たせようとしたのではないでしょうか。
一方、この箱は最終的に彼女の形見のような役割を主人公に持たせます。主人公にとっては彼女が自身に要求した最後の贈り物であり、これによって主人公が立ち直っていくシーンにもつながるため、物語の中で重要なアイテムであり、私の好きなポイントです。
まとめ
まとめです。本日は「100回泣くこと」に関して記事を書きました。
本書は淡々と描かれるどこかリアルなその内容ゆえに、その王道的結末にどこか悲しさを誘われるような、それでいてスッキリさせてくれる恋愛小説でした。
そんな私は特に以下の2点が好きなポイントです。
- 主人公と彼女の寄り添い合う生き方
- 絶対に明かない箱
私も将来はこんな人と寄り添い合いながら生活してみたいなぁ~なんて俗っぽい感想もなくはないです。一方で、私自身の日々の生活ももっと大切に生きてみる必要があると感じさせられました。
話は変わりますが、私は本書を大手古本屋「ブックオフ」で購入しました。本がないお店で一時期話題になりましたね。
先述の通りですが、こちら2007年の作品であり本記事作成現在2023年から見ると16年も前の作品です。現代では電子書籍が普及しており、また実物が欲しい場合もAmazon等で簡単に手に入る時代の中ではありますが、古本屋での本探しも楽しいものですので、いつか記事にまとめようと思います。
話が逸れましたが、以上です。